お知らせ

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2018.01.05

コンソーシアムを始めるにあたってアドバイザリボードの渋澤健さんよりメッセージをいただきました。

コンソーシアムを始めるにあたってアドバイザリボードの渋澤健さんよりメッセージをいただきました。

「現代でも通用する昔からの事業の信念」

電車が時間どおりに到着する、おいしい食べ物、アニメなど、日本がとてもすぐれている事柄は多くある。世界の人々は概してこのことを認識している。

しかしながら、ほかにも日本がなかなかうまくやっていて、よりよくなっているが、世界に広く知られていないこともある。そんな事柄の一つに、国連と加盟国によって2015年に制定された「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成するための日本企業や経営者による努力がある。

その前身で、先進国から途上国への支援と援助に重点が置かれていた「ミレニアム開発目標(MDGs)」とは異なり、SDGs は途上国も含め、全ての国に対して持続的な成長を成し遂げるために意欲的な17の目標を掲げている。

MDGs はどちらかといえば政府間の取り組みで、専門家の領域であった。だが、17のゴールと169のターゲットから成る SDGs でまとめられた領域は広大で、民間の分野も含んでいる。誰でも、つまり企業の大小を問わず、そして個人でも SDGs 達成に貢献することができる。

味の素や丸井グループなど日本の上場企業は SDGs を企業報告書に盛り込んでおり、後に続く企業が出ると思われる。最近経済同友会も SDGs に関する委員会を設置し、NEC の遠藤信博会長が委員長を務めている。

しかしながら、官民のリーダーが委員となっているビジネス&持続可能開発委員会など、SDGs に対する世界的な取り組みを見てみると、そこには日本の存在がない。その委員会には中国、インド、シンガポール、アフリカのメンバーがいるが、SDGs に取り組んでいるにも関わらず、日本からはいない。

日本にとって明らかなのは、SDGs に取り組むだけでなく、自分たちのことも世界に伝える必要があるということだ。

さらに日本は持続可能な開発について知る必要がある。東京商工リサーチによれば、100年を超える歴史を持つ企業は3万3,000社以上あり、そのうち564社は上場し、それは全上場企業の15パーセントあまりを占めている。

これら3万3,000社のうち、65パーセントは封建的な江戸時代から新興国として日本が登場した明治時代に、20パーセントは西洋の先進国に急いで肩を並べた大正時代に創業された。

しばしば「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一はそうした時代に、現在みずほフィナンシャルグループの一部となっている日本で最初の銀行を含め、約500社の創業に携わった。彼は崇高ながら簡素な構想を持っていた。日本に富をもたらし、国の名を知らしめるために、民間が力をつけなければならない。彼の方策は資本主義という経済の仕組みを取り入れることだった。

彼の構想は「論語とそろばん」から生まれたもので、その考えは道徳が事業と一体にならなければいけないというものだった。

しかしながら、それは事業を行なう上で簡単なものではない。両極端にあるようなものを一つにすることは、よほどの想像力と強い意志を必要とする。

さらに事業を行なう上でやさしい方法でもない。渋沢の談話録である『青淵百話』で、「企業においては、役員の肩書もその資産も、すべて多数の株主から委託されているものである。したがって、株主の信用を失った経営者は、当然、ただちに職を辞するべきである」と述べている。彼が150年ほど前日本に資本主義を取り入れたとき、それはガバナンスをともなうものだということを知っていた。

現在の日本では、ESG の考え方は投資における重要な要素として、より広く知られるようになってきている。2015年に年金積立金管理運用独立行政法人が責任投資原則(PRI)に署名したことは日本における ESG 投資にとって大きな節目だったが、すでに100年以上前からその道は開かれていたのである。

多くの企業が、投資家が ESG について面会を求めてくる際、彼らは G(統治)だけにしか関心を示さず、E(環境)と S(社会)には興味を示さないと不満を述べている。

これは確かにそうなのだと思う。だが、よい G なくして、E と S を実行するのは困難だということを覚えておくのが大切だ。ガバナンスとは、経営陣に対して株主のどれいになれと強制する活動でも、会社から価値ある財産を奪うものでもない。

ガバナンスとはよき取締役会の実践であり、持続的な企業価値を作り上げるのに必要な基盤である。企業が、特に資本市場における短期的な投機筋に対するものとして、長期にわたる株主を仲間としたいのならば、よき統治状態にあることは不可欠だ。常識である。

長期の投資家と企業は同じ船に乗っており、持続的な企業価値を作る上での利害関係者として違った役割を果たしている。長期の投資家は ESG への取り組みが短期的な利益や株による利益に結びつかないことを理解しており、どちらかといえば企業の外から情報や視点を提供している。こうした情報はすぐに役立つものばかりではないかもしれない。だがしかし、想像力と決意を用い、そしてさまざまな情報、視点を融合させることで持続的な企業価値を作り出す道につながる。

多くの ESG 投資家は投資先を検討する上でふるいを設ける。だがコモンズ投信では、ESG をふるいとして使わない。というより、ESG を投資先との対話の道具として活用する。

私たちはその会社に対するデジタルの、そして財務の情報をさまざまな方法で入手することができる。しかし、財務情報は通常過去についてのものだ。

未来に向け進む同じ船に乗っている利害関係者として、企業のアナログな、非財務価値は持続的な価値を作り出す上で必要なものだ。ESG について企業と関わることは、ペーパーに出てくるとは限らない企業の基本的価値観を私たちが理解するのに役に立つ。企業の基本的価値観を理解すればするほど、その会社に対して長期的な投資家として関わる度合いは深くなる。

ESG は良識的な投資なのだ。

コモンズ投信株式会社取締役会長
渋澤 健